令和元年度の国税庁統計年報が発表されました。
平成27年に税制改正があり、各金融機関では相続税対策提案が進みました。
中でも毎年110万円ずつ生前贈与していくという方法は、贈与税の基礎控除額内であり、贈与税を納める必要がないことから提案されるケースが多いと思われます。
生前贈与が進展している地域がありましたので、傾向を分析してみました。
目次
沖縄と北海道は贈与者が多い傾向
令和元年度の統計年報によると、令和元年に相続税が課税された被相続人の数は11万5,267人でした。
この人たちは亡くなった人たちです。
一方で亡くなったときに、相続税が多くならないよう生前贈与を行い、この年に贈与税を課税されている人の数は40万6,058人でした。
したがって、相続税が課税された人の約3.5倍の人が贈与税を支払って相続税対策していることになります。
日本国内には11の国税局(沖縄は国税事務所)があり、各地域の税務署の事務を指導監督しています。
生前贈与を行っている割合を国税局別にみると、沖縄5.06倍、北海道4.46倍となっており、全国平均3.5倍よりも生前贈与している人の割合が大きいことがわかります。
各地域での高齢者の年齢構成が大きく変わらないとすれば、沖縄や北海道は他の地域よりも生前贈与が普及しているという結果になります。
高額贈与者は東京と大阪に多い
贈与税の最高税率は55%です。
したがって、もし50億円を贈与したら27.5億円は贈与税として支払うことになります。
こんな高額贈与をする人はどこにいるのか?
上記年報では50億円超の贈与が全国で6件あり、東京が4件、大阪が2件でした。
死亡時の相続においても最高税率の55%がかかってしまうため、「もういいや、やっちゃえ」って感じなのでしょうか。
贈与税がかからない110万円を10年かけて455人へ贈与すれば非課税です。
しかし、そんなに家族は多くはいませんし、生前贈与での対策には限界がありますね。
そもそも贈与提案が進んでいないかもしれない
平成27年の税制改正で相続税が実質的な増税となりました。
そこで少しでも納税額を下げようと生前贈与による相続税対策が提案されていたことは事実です。
しかし、あまり贈与提案は進んでいないのではないかと捉えられる数字があります。
平成27年の約45万人をピークに贈与税の課税対象者数は減っているのです。
令和元年の贈与税の課税対象者は約40万人となっています。
※ 下図、左グラフ参照
「そもそも110万円以内の贈与であり、申告をしていないのではないか?」
という意見もあると思います。
しかし、金融機関では贈与を確実なものにするため、贈与額を110万円より少し増やして、敢えて贈与税を支払うことで証跡を残す進言もしています。
ですので、課税対象者数が全体像をあらわしていると考えて問題はないと思います。
贈与提案はまだ受け入れられる余地がある
私は金融機関の人とお話をする機会が多いのですが、銀行や保険会社の担当者にお聞きすると
「相続や贈与提案は一巡してしまった」
という意見をよく聞きます。
しかし、平成27年以降の贈与税課税対象者数が減っているところを見ると贈与提案の余地はまだありそうです。
特に関東信越と広島の税務局では生前贈与の納税者数が少ないので、提案の余地がさらにあるのではないかと思います。
様々な相続税対策がある中、生前贈与は早くから行ってこそ効果がある対策です。
もう一度提案の見直しをしても良いのかもしれませんね。
まとめ
今回は国税庁の「令和元年統計年表」から相続税の課税対象者数、贈与税の課税対象者数を比較してみました。
データから見ると以下のポイントが見えてきました。
✅ 沖縄と北海道は生前贈与対策が進んでいる
✅ 高額贈与は東京と大阪に多い
✅ 関東信越と広島は贈与提案の余地があるかもしれない
2021年の相続税対策提案はまだまだこれからが本番です。
参考にしていただけたら幸いです。
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