人生100年時代を語る上で、よく聞くようになった言葉です。
ジェロントロジーとはGerontologyと書き、ギリシャ語で老年をあらわすgerontと学問のologyがくっついた言葉です。
日本では「老年学」と訳されます。
今、なぜジェロントロジーが注目をされているのでしょうか?
答えは簡単です。
「高齢者を理解しないと、市場から受け入れられなくなり、企業経営に影響を及ぼすから」
ジェロントロジーアドバイザー、ジェロントロジーコンシェルジュの資格を持つ私が、
ジェロントロジーの基本について説明します。
目次
日本の高齢化率は前人未到の領域
日本において、全人口における高齢者の割合はどのくらいなのでしょうか?
全人口における65歳以上の人の割合を高齢化率と言います。
たとえば、100人の村で65歳以上の方が7人いるとすると、この村の高齢化率は7%ということになります。
この高齢化率はWHO(世界保健機構)の定義ではこうなっています。
7%:高齢化社会
14%:高齢社会
21%:超高齢社会
お気づきだと思いますが、7の倍数で定義されているんですね。
では、今の日本の高齢化率はというと・・・28.4%*です。
*出所:令和2年高齢社会白書(全体版)
既にWHOで定義されていないゾーンにいます。まさに前人未到。
今後、この高齢化率はさらに上がっていくと考えられます。
市場は国民の消費行動で成り立っています。
生産年齢人口が多かった、高度経済成長の時代は若い人が消費をけん引しました。
しかし、今や人口構成の中で高齢者が一番多い時代です。
市場は高齢者で形成されていると言えます。
高齢者が増えると市場の原理が変わる
高齢者はそんなに多くの出費はしないので、市場の原理は変わらないのでは?
これは大きな誤りです。
個人金融資産の内訳をみると、実は日本の個人金融資産のうち、約6割を高齢者が持っています。
つまり、高齢者の数が多いだけでなく、保有金融資産も高齢者に偏っているわけです。
人口の多くを占める高齢者、そして個人金融資産の多くを持つ高齢者。
市場のマジョリティを形成していることは明らかです。
これまでのサービスの提供方法では、市場を構成する高齢者に受け入れられないケースも出てきます。
高齢者を理解する=市場に受け入れられる
ひとつ、老年学に係わるクイズです。
とあるスーパーで、大きなパックで販売していたお寿司を小分けにして販売をしたところ、通常より売り上げが伸びました。
これを応用して牛肉を小分けにしたところ、あまり売り上げが伸びなかったそうです。
なぜでしょうか?
お寿司は生ものであり、冷凍すると美味しくなくなります。
なので、高齢者は通常パッケージだと食べきれないと考え、購入を控えていました。
しかし、小分けにしたものがあれば、多少割高だと感じても購入する人が多くいたのです。
ところが牛肉は違いました。
「牛肉は凍らせて保存できる」「まとめて購入したほうが安い」
という当たり前のことを、高齢者は経験し、理解しているため売り上げが伸びなかったのです。
私はこの問いを、ジェロントロジーのセミナーで投げかけられたとき、答えがすぐにわかりませんでした。
私は高齢者は堅実であるが、物事の判断能力は全般的に低下していくと考えていました。
高齢者を理解する(結晶性知能)
高齢になると、車の運転など、とっさの判断を要する流動性知能は低下していきます。
しかし、経験やコミュニケーションを踏まえた判断機能は向上していきます。
これを結晶性知能と言います。
今回の牛肉を例にとると、私は高齢者が流動性知能も結晶性知能も低下すると考えていたため、
すぐに答えがわからなかったのだろうと思います。
高齢者を理解する(ジェロントロジー)
私たちは老いるということを学問として学んできませんでした。
年を取ると、どんな機能が衰え、どんな機能が伸びるのか?
今、これらが最新の研究で解明されつつあります。
その研究がジェロントロジー(老年学)です。
企業の商品やサービス開発担当は何歳の方でしょうか?
40代、50代?どこまで高齢者のことを理解できているのでしょうか?
高齢者のことを理解していない世代が、頭で想像して提供する商品が本当に高齢者市場に受け入れられるのでしょうか?
高齢者の本質をわかっていないと、マーケット自体を見落とす可能性も出てきます。
高齢者に受け入れられるサービスを考えるためには高齢者自体を理解しなければなりません。
まとめ
今回はジェロントロジーがなぜ注目されているのかについてみてきました。
✅ 日本の高齢化率は世界一位
✅ 市場は高齢者によって形成されつつある
✅ 高齢者を理解することが市場をコントロールすることである
ジェロントロジーは高齢者について総合的に学ぶ学問です。
したがって、今後の新たなサービスを考案する上で前提としておくべきということですね。
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